• 処遇軸を保有能力から役割へ(製造業S社様)

 三十数年前に能力主義による9等級の職能資格制度を導入し、これまで段階号俸表による賃金制度と能力・情意・成績評価による人事評価制度によって運用を行ってきた。等級に紐づく役職の付与によるモチベーションアップや、成長の鈍化に合わせて昇給号俸の見直しを行ってきたが、社員の平均年齢が高まったこともあり、全体的に年功的な傾向の賃金体系となっているので、賃金制度を見直したいとのご相談であった。  

 

 社員の保有能力を評価するという発想から、会社が社員に与える役割を設定するという考え方への転換をご提案し、役割の違いを説明できる程度の等級数に再編した結果、5等級の等級数とし、役割基準書を作成した。また段階号俸表による賃金表もゾーン方式に改め、社員各人の月例給与は現行のまま位置付け、今後の評価によって時間をかけて社員各人の実力相応のゾーンに収まっていく仕組みを導入した。

 

  • 月例給与を「日給+出来高給」から月給制へ変更し、人事評価で定期昇給実施へ(建設業K社様)

 社員数10余名のうち殆どが工事施工に携わっており、職人気質の社風によって組織運営を行ってきたが、業績は堅調であるものの、人手不足や長時間労働の解消、また年次有給休暇の取得義務など「働き方改革」に伴う法令改正への対応の必要からご相談があり、今後は労働時間の長さではなく、効率的に生産性の高い仕事をする社員が報われるような組織風土に変えたいとのご要望であった。

 

 これまで給与の手取り額の不満が退職者の退職理由として多く、仕事の繁閑によって手取り額が変わる不安定な日給+出来高給から日給月給制に変更を行った。現場のモチベーションアップのため査定によって手当として出来高で支給していた部分についても、基本給(月給)に組み込むこととし、手当によって仕事の対価としての要素を分散させずに、基本給自体が社員の地位と習熟を表すかたちに変更した。

 

 今後は人事評価改善助成金を活用しながら、正社員と嘱託社員を1本の軸で捉えた等級制度、ゾーン型賃金表及びスキル評価と組織行動評価による評価制度を導入する予定である。

 

  • 基本給連動の退職金制度をポイント方式に移行 (資材販売業T社様)

 約40年前の会社組織への変更当時、就業規則を同業の上場企業の規定を参考に作成し、その後は法令改正に従って規則の変更を行ってきたが、退職金規程は作成当時から変えずに運用してきた。

 

 創業後暫くは経験者の中途採用が中心であったが、業容の拡大と共に新卒採用及び若年未経験者の比率を高めてきた。近年、中途採用で入社した社員の定年退職者が増加しており、退職金規程に基づいた定年退職金の支給を行ってきたが、年度によっては相当の費用負担が生じている状況から定年退職金の将来予測を行ったところ、今後10年後以降から長期勤続者の定年退職金が増大し、中退共からの支払いも所要額の30%程度にとどまり、会社損益上からも困難な状況が予想された。

 

 退職金規程を分析した結果、作成当時の上場企業の支給率を参考にしていることや、勤続20年を超えたあたりから勤続が上がるごとに逓増的に支給率が上昇する仕組みであり、企業の実力を超過した規定となっていたため、退職金制度の全面的な見直しを行った。

新制度の定年退職金は、ポイント方式による次の構成とし、移行時点の在職社員の退職金額をポイント換算することにより既得権を保証し、スムーズな移行を行った。

退職金

基本退職金+功労加算金+特別加算金

基本退職金

基本ポイント(勤続年数別)×基本単価

功労加算金

功労加算ポイント(資格等級・評価別)×功労加算単価

特別加算金

特別加算ポイント(退職事由別)×特別加算単価

 

 今後は、人件費に対する考え方を見直し、退職金などの長期決裁型賃金から、賞与など短期決裁型賃金への比重を高めていく方向である。

 

  • 処遇加算取得のための手続書類となっていたキャリアパス制度(人事制度)を人材育成のために再編(A法人様・介護事業所)

 介護職員処遇加算制度は、国の政策により介護職員の賃金水準や就労環境向上のために創設された制度であるが、処遇加算には事業所の取組みに応じて段階があり、より高い加算を取得するには、職位職責に応じた任用要件・賃金体系・研修等の資質向上のための取組み・評価等に基づく昇給制度の導入などキャリアパス制度(人事制度)の整備が必須となっている。

 

 近年の介護報酬は減算傾向であり、介護事業は一般的に人件費比率が高いため、安定経営には処遇加算の取得が必要であるが、計画・実績の報告など手続書類が煩雑であり、これまでキャリアパス制度の内容まで手が回らなかったが、人材採用や定着、育成の面から実効性のあるものにしていきたいとのご相談であった。

  

 キャリアパス制度が処遇加算の適用を受ける介護職員にのみ適用されており、介護職員以外の職員には人事制度がなかったため、法人内の全職員を網羅する役割等級制度を導入することとし、評価制度についても職種ごとにベテラン職員に聞き取りをしながらスキルマップとして仕事内容と達成水準をまとめたものを業務スキルと組織行動評価による評価シートに展開して内容を一新した。実際の評価においても、本人評価と面接を導入し、上司と期の振り返りを行うことで人材育成を行うやり方を採用した。